Torリレー運用の始め方
このページは、初めてTorリレーを運用する方向けの簡易ガイドです。まずはミドルリレー(Middle/Non-exit)から始めるのが無難です。十分に安定し実績がつくと、ネットワーク側の選出によりガード(Entry)リレーとなることがあります。
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注意
ここは一般的な技術情報です。法的助言ではありません。日本国内での運用は自己責任で、契約・社内規程・法令に従ってください。
リレーの種類
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ガードリレー(Guard / Entry)
ユーザーが最初に接続する入口。設定で強制するものではなく、安定した稼働・帯域・信頼性が評価されるとネットワーク側で自動的に選出されます。
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ミドルリレー(Middle / Non-exit)
通過トラフィックを中継する中間点。初学者に最適で、
ExitRelay 0(非出口)で運用します。 -
ブリッジリレー(Bridge)
検閲を回避するための非公開リレー。特定のユーザーにのみ情報を提供します。設定が複雑なため、経験者向けです。
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出口リレー(Exit)
ユーザーのトラフィックが最終的に出る出口。法的通知や法執行機関の調査を処理する能力が必要であるため、非推奨です。
推奨要件(目安)
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ネットワーク
- 上り・下り 各 10〜50 Mbps 以上(低速でも可、安定性が重要)
- ポート開放(例: ORPort 9001/TCP)。NAT環境ではポートフォワーディング
- IPv6対応でホストする場合、固定IPが望ましい(動的でも可)
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ホスト
- Linux推奨(Ubuntu 22.04+ など)
- 他サービスと分離(専用ユーザー/VMを推奨)
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運用
- 長時間稼働(できれば24/7)。自動更新・監視(ログ/メトリクス)
- 契約・社内規程の順守(利用規約でのサーバ/転送の可否)
クイックスタート(Ubuntu・ミドルリレー)
- 必要なパッケージをインストール
sudo apt update && sudo apt install apt-transport-https gnupg
- Torのリポジトリを追加
echo "deb [signed-by=/usr/share/keyrings/deb.torproject.org-keyring.gpg] https://deb.torproject.org/torproject.org/ $(lsb_release -cs) main" | sudo tee /etc/apt/sources.list.d/torproject.list
echo "deb-src [signed-by=/usr/share/keyrings/deb.torproject.org-keyring.gpg] https://deb.torproject.org/torproject.org/ $(lsb_release -cs) main" | sudo tee -a /etc/apt/sources.list.d/torproject.list
wget -qO- https://deb.torproject.org/torproject.org/A3C4F0F979CAA22CDBA8F512EE8CBC9E886DDD89.asc | gpg --dearmor | sudo tee /usr/share/keyrings/deb.torproject.org-keyring.gpg >/dev/null
/etc/tor/torrcを編集(ミドルリレーの最小例)
## Information
Nickname SAN-YourNick # 各自でニックネームを設定
ContactInfo relay-operator@example.com # 公開されても問題のないメールアドレスを設定
## Port(IPv4/IPv6可)
ORPort 9001
# IPv6を使う場合の例: ORPort [(実際のIPv6アドレス)]:9001
## Middle relay
ExitRelay 0 # DO NOT CHANGE
ExitPolicy reject *:* # DO NOT CHANGE
## 帯域
RelayBandwidthRate 1000 MBytes
RelayBandwidthBurst 2000 MBytes
- ファイアウォールで ORPort を許可
sudo ufw allow 9001/tcp
- 起動と自動起動を設定
sudo systemctl enable --now tor
sudo systemctl restart tor
sudo systemctl status tor
- 到達性を確認
ss -lntp | grep 9001 || sudo netstat -lntp | findstr 9001
数時間〜1日ほどで、公開リレーであれば Relay Search に反映されます。
ガードフラグは自動評価で付与/剥奪されます。設定で直接付けることはできません。
運用のヒント
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セキュリティ
OS/パッケージの定期更新、最小権限、他サービスの分離。SSH鍵認証や監査ログを活用。
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監視
Torのログレベルは
notice以上が目安。メトリクスや到達性の確認を習慣化。 -
コミュニティ
公式リレーガイド を参照し、知見を共有しましょう。